前回のあらすじ
第5話では、のび太が初めての仲間となるスライム「プルルン」と出会い、心の距離を一気に縮めました。弱々しく見えるスライムですが、その純粋な好意と懐っこさで、のび太に初めての“信頼できる存在”という安心感を与えてくれます。
名前をつけることで生まれる絆。そして、それを温かくも少し警戒するように見守るリューシカの姿。
小さな友情の芽生えの裏では、村の外で何者かの不穏な動きが始まっており――静かだった日常に、変化の兆しが忍び寄っています。
■前回 のび太が異世界転生!?ファンタジー世界で生き残れるのか? 第5話 「初めての仲間はスライム」はこちら
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のび太が異世界転生!?ファンタジー世界で生き残れるのか?第5話 初めての仲間はスライム
前回のあらすじ 第4話では、のび太が初めて魔物と遭遇し、命の危機にさらされるという衝撃の体験をしました。恐怖に駆られて泣き叫びながら全力で逃げる中、リューシカの助けによって命拾いを果たします。 逃げる ...
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異世界の日常はちょっと違う
朝日が昇る頃、のび太はすでに目を覚ましていた――というより、プルルンのぷるぷるとした跳ねる動きで無理やり起こされた、が正しい。
「うわっ!?な、なに!?……ああ、プルルンか……」
のび太は寝ぼけ眼をこすりながら、枕元で跳ねていた青いスライムを手のひらにのせた。昨日仲間になったばかりの彼(?)は、朝からとんでもなく元気だ。
「君って、もしかして朝型なの……?僕、朝はニガテなんだけどなぁ……」
寝癖だらけの頭をポリポリ掻きながら、のび太は木の扉を開けて外に出た。そこには、すでに剣の素振りを始めているリューシカの姿があった。
「遅い。ほら、朝の巡回に行くよ」
「えぇぇぇ……今日も!?昨日も草原3時間歩いたのに……」
「異世界でも、怠け者は生き残れないの。ほら、文句言ってないで行くよ」
リューシカに引きずられるようにして草原に向かう途中、のび太はふと呟いた。
「……異世界でもさ、やっぱ僕って、のび太なんだよね」
リューシカは一瞬だけ振り返り、そのまま小さく笑った。
「そりゃそうでしょ。どこに行こうが、あんたはあんた。でも……」
彼女は草を踏みしめ、真っ直ぐに前を見据えた。
「“のび太だからこそ”できることも、あるかもしれないよ」
「……え?」
言葉の意味を咀嚼する前に、ぷるんっ、とプルルンが宙を舞った。小さな体で草むらに飛び込み、何かを跳ね飛ばす。
「うわっ!なんか出た!?」
のび太が駆け寄ると、そこには奇妙な果実のような物体が転がっていた。
「……これは“マルグの実”。体力を少しだけ回復させる、まあまあ珍しい草原の実よ」
「プルルン、こんなの見つけてたんだ……」
「……ねえ、のび太」
「うん?」
「そのスライム、運が良すぎると思わない?」
言われてみれば、確かに。ただ跳ねてるだけに見えて、落ちてくる小石を避けたり、食べ物を見つけたり。もしかして――。
のび太は空を見上げた。どこかで風が草原を撫でる。
「……異世界でも、僕は僕。でも、もしかしたら……この世界には“僕の強み”が、ちゃんと通じるのかもしれない」
“運”という、見えない力が。
「ぷるるん!」
プルルンが元気に跳ねた。のび太は少しだけ、自分の足で立っている気がした。

