初めての仲間はスライム(後編)
「よーし、それじゃあ……君の名前、考えなきゃね!」
のび太はスライムを手のひらに乗せたまま、得意げにうんうんと唸った。スライムは「ぷるんっ」と跳ねて催促するような仕草を見せる。
「うーん、スライム……スライム……あ!ぷるぷるしてるから、『プルルン』とかどう?」
「ぷるるっ!」
まさかの即レス。のび太は感動に目を輝かせた。
「決まりだね、プルルン!今日からよろしく!」
スライム――プルルンがのび太の手の中で嬉しそうに揺れる。小さな身体に、感情が宿っているように思えた。
しばらくして村に戻ると、リューシカが腕を組んで待っていた。
「……お帰り、のび太。で、そのスライムは?」
「見て見てリューシカ!こいつ、僕の仲間になったんだよ!名前はプルルン!」
リューシカは眉をひそめながらも、少しだけ興味を示したようにのび太の手元を覗き込んだ。
「へぇ……普通、スライムって魔物だよ。こんな風に懐くなんて、初めて見た」
「僕にもびっくりだよ……でも、プルルンは本当にいいやつなんだ!なんかこう、こういうのって、相性ってやつなのかも」
「ふぅん……まあ、邪魔さえしなければ好きにすれば?」
そう言って踵を返すリューシカの頬が、ほんの少しだけ緩んでいたことに、のび太は気づいていなかった。
その夜。
のび太の部屋の片隅には、柔らかく光る小さなスライムの姿があった。まるでランプのような光を発しながら、ぷるぷると一定のリズムで呼吸のように動いている。
「はぁ……今日は疲れたけど、なんか……いい日だったなぁ」
寝転がるのび太のすぐそばで、プルルンもころんと身体を傾ける。まるで一緒に眠ろうとしているようだった。
「これからよろしくね、プルルン……」
のび太のまぶたが、ふわりと重くなる。いつものように、一瞬で眠りにつく彼の隣で、スライムの光は優しく揺れていた。
その時だった。
――ピキィッ。
夜の静けさを破る、小さな氷が割れるような音。誰かが、草陰で何かを踏みつけた音だった。
リューシカはすでに目を覚まし、剣を手に窓辺から外を睨んでいた。
「……ふん、のび太が仲間を得た途端に動き出すとはね。やっぱりこの村、何かに狙われてる」
静かに呟いたその声は、剣の鞘の中で共鳴するように響いた。
――のび太の冒険は、まだ始まったばかり。けれど、小さな仲間との出会いが、彼の運命を大きく変えていくことになるのだった。
今回のまとめ
第5話では、のび太が初めての“仲間”となるスライム「プルルン」との出会いを果たしました。弱くて小さい存在ながらも懐っこく、のび太に懐いたプルルンは、これからの冒険にとってかけがえのない存在になっていきます。
孤独だったのび太に訪れた初めての絆。そしてその裏で、村を揺るがす不穏な影もまた動き出そうとしていました。次回は、仲間と共に初めての“試練”が幕を開けます。
次回、第6話『異世界でものび太はのび太』をお楽しみに!
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