前回のあらすじ
第4話では、のび太が初めて魔物と遭遇し、命の危機にさらされるという衝撃の体験をしました。恐怖に駆られて泣き叫びながら全力で逃げる中、リューシカの助けによって命拾いを果たします。
逃げることすら「生き残るための力」だとリューシカに教えられたのび太は、自分の“逃げ足の速さ”に小さな可能性を見出します。絶望の淵から少しずつ踏み出すその姿には、冒険者としての第一歩を踏み出す覚悟が感じられました。
■前回 のび太が異世界転生!?ファンタジー世界で生き残れるのか? 第4話 「魔物に追われて泣きながら逃走」はこちら
-
-
のび太が異世界転生!?ファンタジー世界で生き残れるのか?第4話 魔物に追われて泣きながら逃走
前回のあらすじ チート能力もアイテムも一切持たないまま異世界に転生したのび太は、リューシカの手引きでギルドから初依頼を受けることになりました。内容は単純な荷運びでしたが、筋力1ののび太にはあまりにも過 ...
続きを見る
初めての仲間はスライム(前編)
のび太は村の外れにある小道を、ひとりトボトボと歩いていた。
「リューシカ……今日は“自主練”にしようって言ってたのに、結局この草原コースなの……?」
ブツブツと文句を言いながらも、木剣を手にしているのは自分からだった。昨日の一件で、怖さを知ったぶん、生きるための準備を怠ってはいけないと、ほんの少しだけ思えるようになったのだ。
「でも……ひとりってやっぱり怖いな……」
そう呟いた矢先、どこからともなく「ぷるん」という奇妙な音が聞こえた。のび太はビクッと肩を震わせ、周囲を見渡す。
「ぷるん……ぷるん……」
音の正体は、草むらの影から現れた。
それは、薄い青色の、半透明な“ぷるぷる”した物体だった。直径はせいぜい30センチ程度。まんまるの身体を小さく跳ねさせながら、のび太の方へと寄ってくる。
「ス、スライム!?……って、あれ? 怖くない……かも?」
のび太は腰が引けながらも、木剣を構えようとはせず、じっとスライムを見つめた。向こうも攻撃してくる様子はない。むしろ、なんだか――可愛い。
「……ぷるん?」
スライムは足元にすり寄るようにして跳ね、のび太の靴先に触れる。まるでじゃれてくる子犬のようだった。
「……ひょっとして、敵じゃないの?」
恐る恐る手を差し出すと、スライムはその上にぴょこんと乗っかった。思ったよりもひんやりしていて、重さはゼリー程度。
「おお……これが、スライムってやつか……! RPGだと最弱モンスターだけど、こいつ……めちゃくちゃ懐っこいじゃん!」
興奮と驚きが交じったその表情に、スライムも「ぷるんっ!」と勢いよく跳ねて応える。
「ふふっ、もしかして君、僕の仲間になりたいの?」
冗談交じりで言ってみたその瞬間、スライムの身体が淡く光り始めた。
「な、なにこれ!? なんか始まった!?」
頭上に文字が浮かび上がる。
【スライムはあなたを“主”と認識しました】
「マジで!? ちょ、こんなイベントあるの!? いや、ゲームじゃないし……でも、仲間ってことでいいんだよね!?」
戸惑いながらも嬉しそうなのび太。ようやく“ひとりぼっち”じゃなくなったという思いが、胸を温かくする。
「うわあ……初めての仲間がスライムだなんて、ちょっと予想外だけど……すっごく嬉しいかも……」
スライムは再び「ぷるるんっ」と元気に跳ねた。まるで「よろしく!」と返しているようだった。
その様子を、少し離れた草の陰から見ていた銀髪の少女が、ニヤリと笑った。
「……まさか、ホントに仲間にしちまうとはね。のび太ってば、意外と運だけじゃないのかも」

