ステータス確認…最弱!?(後編)
「で?これからどうすんの、のび太」
ギルドを出た帰り道、リューシカがふと立ち止まって、のび太を見た。その声に、のび太は返答に詰まる。
「ど、どうするって……僕、強くなりたいけど……どうすれば……」
視線を彷徨わせるのび太に、リューシカはため息をついた。
「強くなりたい、ね。まずその口調と姿勢から変えないと」
「えぇっ!?そ、そんなとこから!?」
「この世界は弱いやつに優しくないよ。立ち止まって泣いてるうちは、何も始まらない」
冷たいようでいて、どこかその言葉には温かさがあった。のび太は小さくうなずく。
「わかった……とにかく、やってみる」
「よし。じゃあ、まずは訓練だ」
二人は村の外れにある空き地へ向かった。そこは木製のダミー人形や、錆びた剣がいくつも転がる訓練場だった。
「剣なんて持ったことないよ……」
「使えなくて当然。でも、握ってみろ」
リューシカが一本の練習用木剣を投げて寄越す。のび太は両手でなんとか受け止め、恐る恐る構える。
「まずは振ってみな」
振る。ぎこちなく。風すら切れず、重さに引きずられて体ごとふらついた。
「……こりゃ、道は長いな」
その場にいた鳥が一斉に飛び立った。のび太の鈍くさい動きが、思わぬ騒音となって響いたからだ。
「うぅ……やっぱ僕、向いてないよ……」
「言ったろ?立ち止まるな。何度倒れても、また立ち上がる。それが冒険者だ」
リューシカの目はまっすぐで、嘘がなかった。
「わかった……もう一回、やってみる」
何度も何度も、のび太は木剣を振った。空振りし、足をもつれさせ、顔面から地面に突っ込むことすらあった。でも、そのたびに立ち上がる。その姿を見て、リューシカは何も言わず、そっと腰を下ろした。
陽は少しずつ傾いていく。汗だくになったのび太の額から、ぽたぽたと汗が落ちる。
「ねえ、リューシカ」
「ん?」
「僕、最弱かもしれないけど……それでも、帰る方法が見つかるまでは、ちゃんと生きてみるよ。この世界で」
「……ふーん。ならその覚悟、ちゃんと見届けてあげる」
彼女はそう言って、微かに口元を緩めた。
訓練の帰り道、村の入り口で二人は立ち止まった。ふと、のび太がポケットに手を入れて、ふとドラえもんのポケットを思い出す。
――ドラえもんがいない。道具もない。助けてくれる友達もいない。
でも、隣にはリューシカがいる。たとえ一人きりじゃなくても、この世界で生きる覚悟が、少しだけできたような気がした。
夜が来る。異世界の空に、見たことのない星が瞬いていた。
――僕の冒険、まだ始まったばかりだ。
今回のまとめ
今回は、のび太が自らのステータスを初めて確認し、思い知らされる「最弱」の現実が描かれました。絶望と不安に打ちひしがれながらも、リューシカの支えを受けて一歩を踏み出し、少しずつこの異世界で生きていく覚悟を固めていきます。
剣を振るう手はまだおぼつかないながらも、彼の中に芽生えた決意は確かなものでした。「最弱」だからこそ見える景色、そして可能性が、ここから広がっていきます。
次回、第3話『チート無し!? 絶望の始まり』へ続きます!
のび太が異世界転生!?ファンタジー世界で生き残れるのか?/関連記事
◇前回
-
-
のび太が異世界転生!?ファンタジー世界で生き残れるのか?第1話 目が覚めたら異世界だった
プロローグ 薄暗い部屋の中、のび太は机に突っ伏して眠っていた。夏休みの宿題も、明日の約束も、全部ほったらかしていた彼の手元には、漫画とお菓子の袋が散らばっている。時計の針は深夜を過ぎ、虫の声だけが部屋 ...
続きを見る
◇次回
-
-
のび太が異世界転生!?ファンタジー世界で生き残れるのか?第3話 チート無し!? 絶望の始まり
前回のあらすじ ステータス確認のため訪れた神殿で、のび太は自身の“最弱”な現実を突きつけられました。筋力1、敏捷2、MP4……まともに戦う力など皆無。しかし、唯一“運”だけは異常なほど高く、99という ...
続きを見る

