村雨八一奇譚 赤い人 序章




「お願いします・・・兄を探してください!」

 

事務所にやってきたのは、派手さのない真面目な女子大生。

オマケに割と美人ときてる。

俺はともかく、美人にめっぽう弱いヒラバのヤツは明らかにいつもよりやる気を見せている。

 

今回の依頼人は女子大生のサオリさんだ。

挨拶もそこそこに、彼女は切迫した表情で『兄を探してください』と来たもんだ。

 

ウチの事務所は特に表看板は出していない探偵事務所のようなもんだ。

といっても、一般的な探偵業ではなく、いわゆる”この世の怪異”を調べる探偵だ。

俺・・・村雨八一(ムラサメヤイチ)が、一応代表を務めている。

 

自分で言うのもなんだが、こんな胡散臭い所にやってくる人間はホトンドいない。

やってくるのはネットで情報を掴んだ、コアな連中ばかり。

そんなこんなで、まるで儲かっちゃいない。

 

え?まともに働け?

それを言われてしまっては身も蓋もないが・・・

とりあえず今は親の残してくれた金で一応生きていけている。

 

言いたい事は解るが、今更改めて聞きたくもないので、話しを戻す。

そう。今は彼女の話を聞く事が先決なのだから。

 

 

彼女が言うには・・・

数日前に彼女のお兄さんが、仲間と共に心霊スポットに出かけて行方不明になってしまったらしい。

 

サオリさんは警察に相談を持ちかけたようだが、ただの家出と判断され、まともに取り合ってくれなかったようだな。

ということで藁にもすがる気持ちでウチに相談しにきたというわけだ。

 

「とりあえず詳しく話を聞かせてもらえますか?

 協力できるかどうかは話を聞かせてもらってから判断します」

 

一応話だけは・・・な。

せっかく来てもらったのもあるが・・・

彼女の、この様子を見ちまった以上、無下に断るわけにもいくまいて。

 

「大丈夫大丈夫!サオリさん!俺達に任せてくれれば、きっと見つかりますから!」

 

またヒラバの安請け合いが始まったか・・・。

依頼人が女だと、すぐ調子に乗るクセはいい加減どうにかならないものか。

しかも相手が美人と来たら、ウザさ二割増しだ。

 

この男・・・平場悠一は幼馴染のオカルトマニアだ。

見ての通り女にだらしないのが難点か。

俺に”特殊な力”が宿ってからは、俺をネタに妙な事件を拾ってくる・・・。

 

せめて金になるような事件を持ってこいと言いたいところだ。

 

まぁ・・・こんな奴でも俺の相棒には違いない。

 

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「ありがとうございます!」

 

すっげぇ・・・期待されてるんだが・・・大丈夫だろうか・・・。

 

サオリさんはお兄さんの話を始めた。

 

今から3日前・・・

彼女の兄のケンジさんは仲間3人と一緒に車で心霊スポットに向かったらしい。

その心霊スポットは、とある山奥にある廃墟らしく、誰もが知るような心霊スポットではないそうだ。

 

現にオカルトマニアのヒラバが、ネットで検索しても出てこないようなマイナーな心霊スポットのようだ。

 

俺に言わせれば、そもそもが心霊スポットであるかどうかも怪しいもんだがな・・・。

その心霊スポットとやらは、山奥の廃墟ということもあり、彼らは心霊スポットと勝手に思い込んでいたのかもしれない。

 

確かに山奥の廃墟には”住み易く”はなってるから否定も出来ない・・・か。

 

4人は夜中にその廃墟のある大まかな場所に訪れたらしく、そのまま山の中へ入ったそうだ。

程なくして廃墟を見つけ、中を探索したらしい。

 

ある程度見終わって結局何事もなかったようで、そのまま4人は帰路につき、仲間の一人の家で飲み明かしたそうだ。

 

つまり、この時点ではケンジさんは行方不明には、なってはいない事になる。

しかし、酔いつぶれた友人らが眼を覚ますと、ケンジさんの姿は忽然と消えていたらしい。

 

友人たちは最初は先に帰ったくらいにしか思ってなかったようだ。

だが、それから1日が経過し、仲間内のメールや電話に反応がない事に不安を覚えた仲間たちがサオリさんに相談したというわけか。

 

仲間同様にサオリさんも心配になり、お兄さんが独り暮らしをしているアパートの部屋を訪れたが、ケンジさんの姿はなかったという。

 

いっこうに連絡がつかないことに不安になったサオリさんは警察に相談。

しかしまともに取り合ってもらえず、今に至るというわけだ。

 

「うーん・・・警察の言うとおり、ただの家出の線はないんですか?」

「それは無いと思います・・・少なくとも、私は兄が家出をする理由に心当たりはありません」

 

悲しげな表情で俯くサオリさん。

しかし、いくら兄妹とはいえ、家族に言えない秘密の1つや2つあるだろうに。

まだ怪異絡みの失踪とは言い難いな・・・。

 

「サオリさんが今話してくれた内容というのは、

 ケンジさんの仲間から聞いたものなんですよね?」

 

「はい・・・」

 

仮にケンジさんの友人らが嘘を言っていないとして、本当に何もなかったのか・・・?

廃墟で何かあった・・・?それが原因?

 

これは実際にその仲間たちに話を聞いた方がいいかもしれないな。

 

「サオリさん。ケンジさんのお仲間に直接話を聞きたいんですが、

 どなたかの連絡先を教えてもらえますか?」

 

まずは事実を確認してからだな・・・。

 

 

次回に続く。

 

まぁ何はともあれ、おめでとう!!

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■登場人物

ヤツヒト/村雨八一(ムラサメヤイチ)

村雨怪異調査事務所の代表の25歳。

ひょんな事から怪異に巻き込まれ、

しにかけてから怪異をかすかに感じれる体質になった。

 

とある事件をきっかけに、一部でその名を知られるようになり

フリーターから怪異専門の調査事務所を立ち上げた。

ビビり。

 

ヒラバ/平場悠一(ヒラバユウイチ)

村雨怪異調査事務所のメンバーの一人。

ヤツヒトの相棒で幼馴染の25歳。

オカルト大好きで、オカルト掲示板の住人。

ヤツヒトを何かと巻き込むトラブルメーカー。

 

ユウナ/本名不明

オカルト掲示板のオフ会で出会った女子高生。

霊感をもっているらしい・・・

調査事務所に入り浸る変な少女。

 

【追記】

しろんのボヤキブログを読んでいてくれた人なら見おぼえがあるかもしれないのですが、ちょうど1年前に書いたものを書きなおしたものです。

 

ほら、今過去記事をサルベージしてるじゃない?

ちょうどこの作品が出てきたんだけど、記事まとめに載せるには長いと思いブラッシュアップして載せる事にした次第です。

 

正直連載をこのまま続けるのかと言われると微妙w

1年前も結局続かなかったしなw

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